実は、結構着物が好きで時々着るから、なんとなく着方は分かっていた。

いつも田中さん達に手伝ってもらうから、一人で完璧に着付けが出来るってわけではないけれど、お正月に着たり、気が向いた時に着たりしている。

夏は浴衣も著るし、着物も浴衣も自分用に何着か持っている。

「ありがとう、ございます!
和装が好きで、何度か着たことがあるもので……」

「あら? そうだったのね!
素敵ねぇ、若いのにそんな情緒があるだなんて!」

ふふっと優しげに笑う笑顔が田中さんに少し似ているような気がして、目の前の先輩中居さんをじっと見つめてしまった。

友達にも両親にもお手伝いさんにももう会えない覚悟で家出したのに、すぐに思い出してしまっている自分に苦笑する。

あ、こんなこと考えてる場合じゃない。
わたしには今、他にやることがあるんだ。