「お母さん! 凛ちゃんが来てるって聞いたんだけどっ!」

どたどたと音を立てて、おばあちゃんの部屋の麩が開け放たれた。
そこには息を切らしながら立ち尽くす着物姿の女性。

「こら、ゆり。
何度言ったらわかるのじゃ!

旅館の若女将がそんな態度じゃだめだろう、もっとしとやかにできんかね」

「お母さんに言われたくないわねっ!

さっきロビーで、大女将が大疾走してるってお客様のあいだですんごい話題になってたわよっ!
いい年してどんだけお転婆なのよっ!」

「なにをっ?!
ゆりに言われたくはないわぃっ!」

……。
暫く2人は言い合っていた。
相変わらずだ、あばあちゃんどころかゆりちゃんも。