「翔護、ありがとう……」

「俺こそ、無茶言ってごめん。
凛、大好きだからね……」

それから、わたし達はこそこそと小声で話し合った。
どこに行こうか、書置きはしようか、バレたらどうしようか。

色々話し合いながらも、書置きを残すことにした。

白い便箋に、わたしは今までの傲慢なお父様の行動や、お母さんが助けてくれない態度に怒っていること。

倉持さんが悪いわけではないけれども、知らない人との突然の婚約は流石に無理だと言うこと。

わたし自身の人生を親が決める筋合いはないこと。
翔護が護衛としてついてきてくれることを書き連ねた。

「凛、これで良いんじゃない?」

「駄目、あと一言……」

翔護が見守る中、わたしは便箋の下部に一言書き足した。

お父様が悔い改めない場合、わたしは帰らない、と。