ペットボトルを放り投げて、翔護の胸に飛びついた。
翔護はわたしをしっかりと受け止めて、抱きしめてくれた。
やっぱり翔護の腕の中は落ち着く……。

「俺も……。凛が、凛だけが、大事だよ。
一緒に、いようね」

わたしは頷いて、ますます強くしがみついた。
無駄に大きなお屋敷。
大勢のお手伝いさん。
自己中心で成り上がりになってしまったお父様。
何もしないお母様。
お父様が見せびらかすためだけに作った、わたしの趣味じゃないわたしの部屋。
わたしの為ではなく、自分のために決められた婚約者。

わたしが本当に落ち着けるのは、もはや翔護の腕の中だけだ。

「ねぇ凛……」

暫く翔護の腕の中で彼の鼓動を聞いていると、頭上から声がかかった。