わたしの視線に気が付いたらしい翔護が、本に栞を挟んで静かに閉じて顔を上げた。

その丁寧な動作すら上品で素敵だな、なんて見つめていると、不思議そうな顔をされた。

「上間さん、どうかしましたか?
何かあるなら聞きますよ?」

「なんでもないよ」

優しい提案に笑みが漏れる。
翔護はいつだってわたしを想ってくれていて、優しい。

わたしも、もっとしっかりしなくっちゃ。

翔護は暫くわたしをじっと見据えて、それから、なら良いのですが。と本に視線を戻した。

わたしは再度、窓の外を眺めた。
雨は、上がっていた。

雨雲から除く小さな光に、わたしは嬉しくなりながら、チョコクッキーの最後の一欠けらをを口に放り込んだ。