「凛ちゃん? お~い?」

「あ、え? ん?」

窓の外を眺めながら惚けていたわたしは、自分を呼ぶ声に驚いて慌てて声のする方に視線を移した。

そこには加奈子ちゃんがお菓子の袋を持って立っていた。

「どうしたの? 考え事?
さっきから静かだなって。

新商品のお菓子、ご試食いかが?」

「あ、ちょっと思い出したことがあって。
ありがとう、頂くね?」

袋から一枚、チョコクッキーを取り出す。

大きめのそれをかじりながら隣を見ると、翔護が本を読んでいた。

綺麗な姿勢で静かに読書をするその姿は、一枚の絵画のようだ。
翔護の周りだけ空気が澄んで、時間がゆったりと進んでいるようにすら見える。