「では、行ってきます」

「行ってらっしゃいませ、お嬢様、ご友人方」

いつものようにお手伝いさん達に見送られながらお屋敷を出る。

「ほら凛、キョロキョロしてると危ないぞ?」

辺りを見渡しながら歩くわたしを、後ろの安達君が注意する。
つい、翔護の姿を探してしまっていた。

「あ、うん、ごめん……」

見送るお手伝いさん達の中に、翔護の姿はない。
きっと田中さんにきつく言われて、自室から出られないのだろう。

「ちっ……。
そんなにあいつがいいのかよ……」

小さな呟きが聞こえて振り向くと、安達君が眉間に皺を寄せていた。

「安達君……?」

わたしの視線に気がついた安達君は、途端に険しい顔から笑顔になった。