「お嬢様、支度は整っておりますか?
学校へ向かう、お時間です」

大きな扉の向こうから聞こえる控えめなノック。
いつもの優しい声。

「うん……。
翔護、ちょっとこっち来て。
準備手伝って?」

新しい制服に身を包んで、全身を鏡で確認しながら、扉の向こうに声をかける。

「はい、お嬢様。
失礼、致します」

一人部屋にしては大きな扉を開けて、翔護が一礼して入ってきた。
わたしと同じ、新しい制服を着て。

部屋に入って、扉を閉めたことを確認して、わたしは翔護に駆け寄った。

「翔護……」

本当は、お嬢様、なんて呼ばれたくない。
名前を、呼んで……?
キス、して……?

表情からわたしの気持ちを察したのか、翔護が少し困ったように笑った。