普段なら靴を履き替えてすぐに教室に行くけど、今日からは近藤さんを5組まで送るって決めた。
「よし、行こっか」
「あんた一階でしょ」
「でも近藤さんは5組じゃん」
近藤さんは少しだけ俺を見つめてから、黙って目を逸らした。
馬鹿みたい、って思ってるんだろうな。
「ねえ近藤さん、俺のこと名前で呼んでよ」
「面倒くさい」
「冬なら2文字で済むよ?」
そんな会話を交わしてるうちに、5組に着いてしまった。
あーあ、近藤さんに名前を呼んでもらえるのはもう少し先になりそうだな...
まあ仕方ないか。
「...冬」
「えっ」
「はい呼んだ」
え、今...冬って...
「近藤さん!! もう一回!!」
って、もう教室入ってるし。
一回だけだったけど、名前を呼んでもらえた。
今日は良い一日になりそうだ。
にやけ顔を抑えられないまま、俺は一階に降りた。

