「あの、寺田…先輩」

どうしてここにいるんですか?と聞きたくても名前を呼ぶので精一杯だった。

緊張でどうしていいかわからない私を見破るように言った。

「夕陽でいいよ!よろしくね。立花めいちゃん」


『ドキッ』

え!?どうして私の名前を?
不思議におもった。

私は部活にも入ってないから先輩は私のことを知らない人が大半だ。

なのにどうして?

「えっと…」

「どうして知ってるのかって?」

すごい。なんでわかったんだろ…

「は、はい」

「だってめいちゃんドジっ子ちゃんなんだもん」

先輩はそう言って笑った。

ドジっ子ちゃんってどういうことだろ…
先輩と話したのは初めてなのに。
それに会ったことも初めて。

「あの、えっと…」
私はなんて言ったらいいのかわからなかった。

「ほら、これ」

渡されたのは図書室利用カードだった。

「どうしてこれを?」

「俺、部活サボって図書室で寝てたらドアが開いてカウンターに隠れてたんだよ」


「うそ…気づかなかった。」
ポツリ呟いた声は先輩には届かなかった。


「ありがとうございます」

そっか。
名前はこれみたから知ってたんだ。
納得。やっと状況が見えてきた。


『寺田ぁぁぁぁぁどこだぁぁぁ』

「やーべ。バレちったよ」

顧問の先生かな?
そういえばさっきサボって図書室で寝てたって言ってたっけ。

「あの寺田先輩…大丈夫ですか?」

隠れなくていいのかな?
屋上なんて逃道もないし見つかりやすいのに。

「夕陽でいいって」

「夕陽…先輩…」

「ん?」


『ドキッ』

今のなに…
今、一瞬だけ胸が熱くなった…


『寺田ぁぁぁぁでてこーーーーい』


「やーべ、俺戻るわ じゃーな。めいちゃん」

先生の怒りにも動じなかった…
それどころか今、手振った…
わ、私に…だよね?

かっこよかったな…



『またここで会えるかな』


キラキラ輝き続けてる夕日に向かってそう呟いた。