『え…』




喉につまって言葉が出てこない。


なんとかあげた声は小さく震えていた。


ゆっくり唾を呑み込む。




『悠のこと、忘れなくていい。俺を利用すると思ってくれていい。だから、付き合おう』




そんなことして良いはずがない。


悠と同じ顔。


同じ声。


性格は違えど、悠の大切な片割れの兄を利用するなんてできるわけない。


けど――


心優の頬に涙が伝う。


ずっと、ずっと、辛かった。


悠が死んでからずっと今まで、胸に穴が開いたような感じ。


もう、楽になりたい。


大きく息を吸い込みきゅっと唇を引き結ぶ。




『…うん…私で良ければ…』




その言葉と共に胸につかえていたなにかが少し楽になった気がした。


今まではまらなかったパズルのピースがはまったような感覚。


頬をつたった涙がポタポタと床に落ちた。