私には、一生忘れられない彼がいる。


〝好き〟も〝愛してる〟も彼に届くことはないけれど、誰と付き合っても結婚しても彼の存在は消えることなく私の中で彼は一番の存在。


あなたは、そんな私の二番目でも許してくれますか?


***


高校の頃、彼が『綺麗だ』と言ってくれた長い髪を肩まで短く切った。


彼が一緒に写ってる写真も全て燃やした。


私が鬱陶しく思っていた長い髪を束ねるため、記念日にくれた赤いシュシュも今はつける必要がない。


なのに、これだけは捨てるに捨てられず今も手首につけたまま。


それともう一つ。


彼と同じ、片割れだけが私に〝過去〟思い出させる。





「心優、もう帰る?」





――城岡 希。

同じ大学の経済学部で彼の双子の兄。






「うん。城岡くんも?」





〝城岡くん〟


私のその他人行儀な呼び方が気に入らなかったのだろう。


軽く額を小突いて苦笑い。