男はほどよく緊張していた。

今日の面接に向けて準備を重ね、ようやく

本番。男は興奮すら覚えた面持ちで面接会

場の扉を開く。

「失礼します。面接を受けさせていただく

久留麻 杉夫（くるますぎお）と言いま

す。」

「おはようございます。確認しますので

少々お待ちください。」

そういって受付嬢がお辞儀から顔をあげた

瞬間。彼女はその違和感に気が付いた。突

如彼女を襲うのは自らの表情の変化であ

る。だがしかし、ここで表情を変えたとこ

ろでこの男の運命が変わることはない。彼

女は必死に表情筋の一切をかためて笑顔を

きめた。

「確認ができましたのでそちらの席へとお

かけください。」

男はありがとうございます。と言うとすた

すたとさもそれが当然のように指定された

席へと行った。

受付嬢は大きく息をして忠告してはいけな

い定めをおった自らにこれがしょうがない

ということを言い聞かせた。