周りは静かで・・・駅の方の繁華街から
にぎやかな音が遠くに聞こえる。

あっ・・・『そりすべり』かかってる・・・。
逃げるのに夢中で全然気付いてなかったわ。

「透子・・・」

謙司さんが私の名前をささやくように発する。

そう言えば・・・
いつから呼び捨てになってたっけ?

さっきとは違う優しい表情の謙司さんと目が合って
トクン・・・
心臓が小さく音を立てる。

名前の呼び方なんて
そんなこと、どうでもいいか・・・。

そう思ってたら・・・・・・

パッ!!

暗がりで色のなかった謙司さんに
突然、色がついた。

なにっ!?

私も謙司さんもびっくりして辺りを見回す。
私たちの周りぐるり、360度
まぶしいほどの光の洪水・・・。
青、赤、黄、オレンジ、ピンク、緑、紫、白・・・
幾何学模様に配列された
いろんな色の無数の小さな光のひとつひとつが
私たちを照らしてる。
光の宮殿の中にでもおるみたい――

またしばらく
2人で言葉を失って見とれてしまう。


ゆっくりと流れる優しい時間が私たちを包む・・・。

「オレたち・・・」

低音ボイスが
私の耳に心地よく響いて


「ここからはじめてみませんか?」


謙司さんの整った正しい笑顔・・・。

その笑顔に
また
トクン・・・
胸が鳴って

とびきりの笑顔で
謙司さんの胸に飛び込む――

降り注ぐ光が
まるで
私たちを祝福してくれているかのよう・・・。


ブレスフルクリスマス
―至福のクリスマス―

サンタクロースが恋をした――



Fin.