私はしっかり目的を持って走ってた。

確か、あそこにあったはず。
中華商店街の鮒川通り沿いの入口のところ。
最近では探すのがめっきり困難になった
電話ボックス――

海側からまっすぐ駅へ
さらに高架をくぐって山側に伸びるこの通りは
いつでも人が多い。
今日はイブやから余計に多いみたい。

ぶつかりそうになりながら人波を縫って
走りに走って息が切れて立ち止まると
まだそこにあった電話ボックスが目に入った。

知らん携帯番号やったら出てくれへんかもしれんけど
“公衆電話”
なら出てくれるかもしれん。
精神状態最悪やのに
走りながらも
意外と冷静にそんなことを考えられてた結果
ここの電話ボックスのことを思い出した。

息を整えて
ひとつ、深呼吸
電話ボックスに駆け込む。
騒がしい外界から遮断される。
受話器を上げて
10円玉を5枚くらい一気に突っ込んで

そして
あのお守り代わりの名刺に書かれた携帯の番号を
ゆっくりダイヤルする。

指先から・・・
あの人に繋がって行く・・・・・・。