「この携帯、全然鳴らなかっただろ?」
私がさっき返した携帯を見せて謙司さんが言った。
「はい」
「これにはほとんど志穂からしか連絡来なくなってたから・・・」
それで・・・『必要ないから』やったんか・・・・・・。
「ごめんね、捨ててくれなんて言われて困ったよね」
「はい、困りました・・・」
私が正直に言うと、謙司さんは苦笑いになった。

「でも、この携帯のおかげでもう一度透子ちゃんと会うことができた」
「えっ?」
「お礼、言いたかったんだ。志穂とのこと、スッキリきれいに終われたから・・・」

そ・・・うやんな。
一瞬、なにかを期待してしまった自分が恥ずかしい・・・。
謙司さん、気付いたかな?

「さっき、なんかカッコいいこと言ったのに・・・結局、暴露しちゃって恥ずかしいな」
謙司さんの方がテレてる。
私の反応には気付いて・・・ないかな?


「別に割り切れなくてもいいんじゃないかな?」
テレ隠しなのか
唐突に謙司さんが言った。

「今はツライかもしれないけど・・・割り切れない余りがいい経験になって、きっと次への糧になる!」
「うわっ、めっちゃ前向き・・・」
「お兄さんの経験上の答えだ!ありがたく納めておきなさい」
謙司さん、ふんっと鼻を高くする。
私はクスッと笑って
「はい!」
元気に返事してた。


謙司さんは
荒んでた私の心にプレゼントをくれた
ちょっと早めのサンタさんみたいやな。

あんなにもやもやしてた気持ちが
信じられへんくらい澄み切ってる。

ちょうど
この
泣けそうなくらいきれいな
冬の寒空みたいに・・・。