復讐屋―儚く、朧気に―




「……絵美さん? 」


「っあ、す、すみません」



ぼーっとしてました、と絵美は夢生にそういうとごほん、と咳払いをして会話を続ける。

しかし、心の中は別のことでいっぱいである。



そんな二人の様子を、外から盗み見る二人の少年がいた。

一人は背が低く色白の美少年で、もう一人は背が高くだるっとしたイケメンだ。


二人は一つのイヤホンを共有しながらつかっていた。そこから流れるのは音楽ではない。


─夢生もとい紬と絵美の会話である。


背が低い方の少年は可愛らしい顔ににやり、とした笑みを浮かばせた。



「大神ィ(オオカミ)、見てよ。さすが人心掌握術の達人って感じしないー?」


美少年は紬を指さしてそういう。

大神、と呼ばれた美少年はふわぁ、とあくびをしながら答える。

イヤホンの繋がったスマートフォンを片手に紬らに視線を移す。


「……うさ、指さしたらバレるから。バレてリーダーに怒られるの、俺は嫌だからな」


「うぇーい。怒られるのは僕だってやだよ」


うさ、と呼ばれた少年はイヤホンを耳から外すと大神に渡す。

それと同時にうさのポケットから着信音がなる。


うさはポケットから薄ピンクのカバーをしてあるスマートフォンを取り出し、画面を見ると顔を歪ませた。


「げっ。噂をすればってやつだ」


でたくないぃ〜と駄々こねるうさに大神ははやくでろ、とうさの頭を小突く。


うさはいやいや画面をスライドさせ、耳に当てるとニコリ、と笑顔を作った。



「はい、リーダー。宇佐木(ウサギ)です」


『hello、ウサギ。出るのが随分遅かったね。
ちなみに今日もウサギに盗聴器を仕掛けてあるから今までの会話は筒抜けだからね?』


「うぇっ。嘘でしょーぉ?」



うさ─もとい宇佐木は着てるパーカーのフードの裏に手をのばす。

そこから外したのは、黒く薄い機械だった。


「……悪趣味ですよーぅ。リーダー」


『知ってたことでしょ?

……それより復讐屋の調査は中断して帰っておいで。わんちゃんとにゃんこが復讐屋店長の情報を掴んだ。

これから作戦会議だ』



「!」



会話の聞こえていない大神は目を見開いた宇佐木に首をかしげた。


宇佐木は「ラジャー、リーダー」というと通話を切った。

そして大神に目を向けることなく紬のいる店に向かって歩き始める。

それについてくる大神に宇佐木はこそり、という。



「これは中断して帰るよ。──ついに店長の情報を掴んだらしい」



大神は目を見開くと、こくり、と頷く。



次第に二人の姿は人に紛れ、消えた。






no side end