no side
└セリナ&理夢
「でさぁ~、って、聞いてる?小虎くん!」
三島 小虎(ミシマ コトラ)は困惑していた。
その理由は、隣で彼女気取りで立つ、芝崎 三香子にあるのだが。
彼女は高校時代に、いきなり当時彼女であった、香取 愛美に近付いた。
何が目的だったのかは、今でもよく分からない。
が、三香子は小虎と愛美の親友─三竹 絵美(ミタケ エミ)に近づいて、愛美から引き離した。
小虎と絵美は幼なじみで、二人で困惑したことをよく覚えている。
小虎は愛美が好きというわけではなかった。
ただ、コクられて、付き合おうという、軽い気持ちで付き合っただけなので、三香子が「愛美には近付かないで」といわれたのに、何となく従っていた。
絵美も似たような理由で離れた。
でも、今は後悔している。
三香子に彼女気取りされるくらいなら、離れなければよかった、と。
数年一緒にいて、三香子は性格ブスだということを、とてもよく小虎は知っていた。
一人で悶々と悩んでいた小虎は、すぐ前に人がいることを知らなかった。
―バタンッ
「うわあっ!」
「ひゃあっ!」
見事にぶつかってしまった。
小虎がぶつかったのは、金髪の美少女─セリナだった。
セリナのあまりの美貌に小虎が固まっていると、隣にいた三香子が怒りだした。
「ちょっと!いつまで小虎くんと抱き合ってるつもり!?」
その言葉に、バッと離れた二人。
するとセリナに、パタパタと近寄る影が見えた。
「せ、セリナちゃん。大丈夫なのです?」
黒髪がよく似合う清楚系美少女─理夢だった。