no side



喫茶店に一人残った青年は、メール制作画面に移り、"眞瀬"にメールを送信する。


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To:眞瀬
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ターゲット芝崎三香子

西王子大学学生、バスケ同好会所属、21歳

依頼人ノ元恋人及ビ、元親友ヲターゲットカラ引キ離ス。

実行日:明日、午後三時、駅前集合


間戸セリナ
性別:女

→眞瀬


堤崎夢生
性別:男

→紬


塁河理夢(るいかわ りむ)
性別:女

→瑠璃



以上ノメンバーデ実行



※尚、このメール既読後削除すること。


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画面には、送信しました。の文字。

青年─紬は、暫く携帯の画面を見ていたが、やがて、くすりと笑い、すっかり冷めたカプチーノを一口飲む。


「"なら、よかったです"……ねぇ」



先程の、紬ではなく、瑠璃が怪我をしたことを伝えると、瑠璃の心配はせず、紬が怪我をしなかったことを第一に喜んだことを思い出す。


──胸くそ悪い


紬はイラついていた。

香取愛美の態度に。

まるで、紬が無事なら誰がどんな目にあってもいいとでもいうような発言に腹が立った。

――いや、詳しくは、"紬が無事なら瑠璃がどんな目にあってもいいというような発言"だが。


嫌味なほど長い足を組み直しながら、紬は思案する。

明日の依頼決行時に、瑠璃を入れたのは、完璧香取愛美への嫌がらせなのだが、果たして瑠璃が大人しく言うことを聞くかどうか……。


途中までそう思い、紬は思い立つ。


──嗚呼、瑠璃は俺のものだった。


と。


だから、瑠璃は俺の命令ならば、絶対に言うことを聞くだろう、と。



ニヤリ、と笑う紬の横顔は、悪意に満ちていた。