瑠璃くんだった。
ポンポンつきの白いニット帽に、赤いダッフルコート。
そこから出る足は、驚くほど細くて、スパッツをはいている。
多分、下には短パンを履いているのだろう。
ダッフルコートに隠れて見えないけど。
黒いリュックを背負っている。
片手には大きい白いウサギのぬいぐるみのついたケータイをもっている。
パッと見、美少女にしか見えない。
よくよく見れば男の子だけど。
きょろきょろ周りを見渡したかと思うと、ぱちり、とこちらを見た。
紬さんの姿を見つけるなり、脱兎の如く走ってきて紬さんに抱きついた。
紬さんは、抱き止めて頭を撫でた。
「一人で待たせてごめんな」
「…あ、め…くれ、た」
「知らない人から貰うなっつっただろ」
「…かえ、した」
「じゃあその口に入ってるもんはなんだ?」
「…(ゴクリ」
「こら、飲み込むな。喉に詰まったらどうするんだ」
……なんか、二人の世界みたい。
周りの人達は、
「イケメンと美少女……癒される~」
「絵になるな~」
「彼女かな?顔は似てないし彼女だよね~」
「超お似合い!」
「可愛い~!!」
等と、のほほんとしていた。
それにむっとした私は、紬さんの手を取った。
「紬さん!場所移動しましょう?」
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近くの喫茶店に入ると、騒がしかったのが静かになった。
私と紬さんは向かい合わせに座って、紬さんの隣にちょこん、と瑠璃くんが座っている。
「ご注文はなにになさいますか」
クエスチョンもなく、棒読みで、いかにもめんどくさいです。と言ってきたウェイターの顔を見上げる。
これまたイケメンだった。
「…れ、ん!」
無表情ながらに、ぱあっ!と顔を綻ばせた(多分)瑠璃くん。
どうやら、知り合いっぽかった。
瑠璃くんに気付いたれんと言う人は、瑠璃くんを見て、微かに目を見開いた。
「瑠璃と紬?……あ、仕事か」
私のほうをちらっと見て、納得したれんと言う人は、瑠璃くんの頭を撫でながら紬さんに問う。
「今、あいついるけど、呼ぶ?」
「ああ。…いや、瑠璃を連れていって貰えるか?後でそっちに顔だす」
「ああ。分かった。おい瑠璃行くぞ」
瑠璃くんの腕をぐいぐい引っ張ったれんという人だけど、瑠璃くんはふるふると首を横にふる。
それを見たれんという人は、紬さんを見る。
「どうするよ、これ」
「嗚呼、とりあえず、注文とってくれるか。俺はいつものでいい。ちょっと瑠璃を緋色んとこに置いてくる」
ずるずると瑠璃くんをひっぱりながら紬さんは店の奥へと消えた。