でも、こんな所で泣いても、
もっと酷いことになるんだろうなぁ……


おちゃらけて、平気なフリして笑っとこう。


涙を拭って起き上がろうとした時、



「桐島さん、大丈夫?」



不意に差し伸べられた大きな手。

……誰だろう?

主を見ると、
初めて同じクラスになった男の子だった。


「……は、はい!これくらい何とも!」


慌てて上体を起こし、彼の声に応える。


すると、彼は心配そうな顔から一転、
無邪気な笑みを浮かべた。


「嘘。涙目になってんじゃん」


その言葉で気付く。


……声を掛けてくれた事が嬉しくて、
涙拭うの忘れてた。


手の甲でゴシゴシと擦り、
「これで大丈夫ですか?」と聞いてみる。


「うん、オッケ。早く席に帰りな?」




私は確信する。


この人、絶対いい人だ。