彼は自分のことなど気にもせずに、わたしだけに真っ直ぐと傘を差し出している。 毛先を念入りに巻いた、茶色いロングヘア。膝丈の、フレアスカート。革製のスクバ。 それらが何一つ、濡れないように。 目の前で、ハル君だけが瞬く間に濡れていく。彼の履く革靴は水分を吸ってびちゃびちゃと音を立てる。 馬鹿だな、ハル君。 なんで何も言わないんだよ。 何も言わないから、また好きになっちゃうじゃん。惨めじゃん、バカ。 今日もわたしは 好きだと言われない恋を楽しむ