「忘れ物……預かってきたよー!!」


上履きの袋を窓からちらつかせながら近付いてきたこの怪しげな中年男性の後部座席に俺は飛び込む。


「ちょうど良かった!! このまま学校まで乗せていってくれ!!」


上履きの袋を預り運転席のおっさんに捲し立てた。



この二人の中年のおっさん達は俺の家で剣道の道場をお祖父様が営んでいる昔馴染みの門下生の二人。


「俺達はタクシーじゃないんだけどなー!!」


助手席に座るボサボサ頭のおっさんがぽつりとぼやくのに俺はバックミラー越しに睨む。


実はこの二人のせいで俺や俺の家族はある事件に巻き込まれ中学時代散々な目に合わされた。
そのせいもあって今もこうして家事ローテーションの中に入れられ俺の家にやもえず通っている。

今日だって……朝練や家事の手伝いを追えて帰るとこお祖父様に忘れ物を届けるように言われたのかもしれないけれど俺にも借りがある彼等は渋々車を学校へと走らせた。