「…ああ、もう…」

ゼロは吹き飛んだ自身の頭部のパーツと左腕を探していた。

「L君の為とはいえさすがに痛いんですが…」

落ちていた上腕を拾いつつ、溜め息をつく。

西で上がった爆発に、ゼロはフウと息を吐くのだった。


「ウォータートラップ!交錯魔法水ノ三角(ウォータートライアングル)!クラップ!」

誘発された爆弾が視界を阻んで、一瞬金髪は消える。

直後襲いかかってきた刃に押され、私はバッグステップを踏んだ。

そろそろ魔力が危ない。

早く決着を着けなければ…


「…ったく、えげつねー攻撃ばっかしてきやがって」

キラリ、輝く瞳は野獣をすら思わせる。

でもどこかその輝きはセレンを思わせた。

ヘリオは剣を静かに突き上げる。

手応えがあって引き抜けば、深紅の血が流れた。

「…っち」

妖精は白いパーカー(あの猫耳の下に着ていたらしい)のポケットを探って青い瓶の中の水をすぐさま傷口にぶちまけた。


たちまち癒えていく傷口は確かに治っているのに。

痛みは一層まして私の全身を麻痺させる。

もうほとんど動けない、それならいっそ。

この魔力すべてに懸けよう。


妖精はにわかに顔色を変えて此方を見据える。

魔力の気でアクアマリンの髪が踊る。

ヘリオはゆっくりと構えた。

「受けてやるよ」


相手は避けるつもりはないらしい。

私は渾身の力を奮う。


「水ノ…」

あ、と思った時には遅かった。


バシャア、と森が揺れて。

「残念でした、妖精ちゃん」


魔力の分配が上手くいかなかったらしい。

魔力喪失で、奇跡の妖精はその小さな体を森に横たえていた。

「死んでねーなら結構だな」

ヘリオは倒れた妖精を担いだ。