ウィングは水浸しの体を引きずってキースを放り投げた。

「ったく、逃がしたか?」

「そんなこと…げふっ…ないと思うけど…ゴホッ…」

「ま、ヘリオが向かってるかな。つか、さっきの爆発は?」

「交錯魔法じゃないかな」

「え?交錯…?」

首をかしげたウィングに、キースはムッとして溜め息を吐いた。

「魔法で強化した夢術のことだよ。強化魔法とも呼ばれてるけど…さっきのは三角(トライアングル)が混じってたんじゃないかな」

「あー、聞いたことが…ある気がする」

ウィングはあははと誤魔化しつつ、それよりも、と話題をそらした。

「大丈夫だったのかよ?ゼロ」

「…まあ、元々特攻みたいな所あったしね」

「…ご冥福をお祈りするか」

「……うん」



「っ、きゃぁっ!」

「よう妖精。捕まってくれよ、悪いけどさ」

「…っ」

倒れた木によって、逃げ道を奪われた私は、目の前の男に対峙する。

男は金髪で、にっこりと笑っていたのに何だか恐い。

震える脚を叱咤して、私は相手をにらんだ。


相手は、まだ10歳位の少女だった。

体つきもファッションも子供っぽく、ガールと言うよりはチルドに近い。

小さな身長は正に奇跡の妖精の名をもつ彼女に相応しい。

でも、ヘリオの目的は彼女自身ではないのだ。

彼女が妖精だ、間違いないと。

ヘリオは剣の柄に手をかけた。