「…なんか…色々大切な物を失った気がする…」
サテはぐったりと倒れ伏した。
「…」
セレンは柱に全体重を預け、そのままズルズルと滑り落ちた。
ギリギリ気を失う寸前だ。
「…何か、最強の敵と戦ったな」
「…うん」
三人ともぐったりだ。
「死ぬ…」
あの部屋で何が行われたのかは三人とも墓までもっていくつもりだ。
だって。
「…一生分の羞恥心が収束された一日だった…」
…だからだ。
まあセレンは言えと言われたら言うだろうから、へリオやアクアが聞かないことを祈るしかない。
「やったなキース君。やっぱりセレンちゃんはサキュバスだな!」
「…」
灰色の円形の部屋の、セレンたちが死んでいる部屋の位置から見てちょうど反対だ。
「ん?おう噂のセレンちゃん」
「…ごめんね、僕もう限界」
キースも倒れた。
「サキュバスセレンちゃん、どうしたの?」
「さ、さきゅば……」
そもそもサキュバスというのは女性の悪魔だ。
美少年ではない、美女の悪魔だ。
「分かってるんだぜセレンちゃん、頑ななまでに種族を教えないその態度が火の元だ!!」
「…それはちょっと駄目だ…こんなコメディーに紹介するわけにはいかない俺の黒歴史」
「固いこと言うないっちゃえぃ!」
「10数年抱え続けてきたトラウマとコンプレックスと劣等感と屈辱をか」
「あったりまえだろそれがお前の仕事だ!」
「…」
セレンは葛藤して、迷った。
でもこれが仕事なら仕方がない。
最初からこんなキャラだったのかは謎だが、確かに今自分はギャグを担当しているのだから…
「…あれは俺が三歳のと」
「言わなくていいよ!!セレンだめ!!」
止めたのはキースだ。
善良なる天使だ。
「僕は訳を知らないけど、セレンに無理やり言わせるのはよくないよ、キング。ね、セレン」
キースの天使のような笑顔に、セレンは一瞬天使を見たような気がした(天使だけど)。
「…キース」
疲れた体に、すごく優しさが染みた。
「…キース……」
「ん?」
「うわぁぁぁぁぁ愛してる辛かったよキースぅぅぅ!!!」
もちろん抱き着いたのはセレンではない。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったウィングだった。


