向かい風に乗って時たま飛んでくる氷塊を、2人は弾きつつ前に進む。
へリオは盾で、セレンは素手で。
「…痛くないの?セレン。それともゼロみたいに機械なの?」
「ちなみに俺は生身の人間だ、キース。痛くないのはこの手袋があるからだ」
「手袋?」
セレンは振り返ることなく、呟くように言った。
吹雪の中でも、不思議とセレンの声は響く。
張り上げているわけでもないのに。
「最高の不可逆性を持った龍革なんだ」
「…龍革」
サテがつぶやく。
「不可逆って?」
「可逆の反対だ…どんな条件を加えても元の状態に戻らないことを言う」
「へぇ」
「これは…一定の方向には一旦加工してしまえば決して破れたり変形したりしない」
「一定の?」
「ああ、外側からはどうやっても変わらないが、内側からはこうやって動かせる」
伸縮自在だ、にこりともせずにセレンはそう言った。
「…いくら」
「ちょっと黙っとけ金の奴隷ヒツジ」
ぼそっと言ったキングに、サテは少し声を荒げた。
「…僕はヒツジじゃないし金の奴隷でもない…!」
「ちなみにこれはもらいものだから正確な価値は知らない」
「貰い物」
珍しいな、とキングが言った。
「お前が誰かから物もらうなんてさ」
「…ずっと前の話だ」
セレンはそう言って、また氷塊を弾く。
「ん」
アスタはそびえたつ山を見つつニヤッと笑った。
「大ボスの気配は、こん中だわ」
ハロウィンカラーの衣装を躍らせ、楽し気に、アスタは笑った。
「あはは、ってな?」


