果たしてセレンは、日没ギリギリに帰ってきた。
「お帰り、セレン」
「…」
待ってた、と笑ったへリオに、セレンは黙って顔を背けつつドルの入った袋を渡す。
「…100万」
「ん」
受け取ってすぐセレンに返したへリオは、笑ったままセレンを座らせた。
「あげるから好きなの買ってきな」
「…」
突き返したセレンに苦笑しながら、へリオは立ち上がる。
「アクアちゃん、ごはん食べにいこっか」
「はぁい!」
嬉しそうに近寄ってきたアクアに、セレンは目を細める。
「…餓鬼」
「が…酷いですよ!!」
ぷくっと膨れたアクアに、セレンは思わず“笑った”。
「!?」
「あは、アクア…顔…何だよそれ…」
笑いをこらえようと口元に手をやりながら、その手も震えている。
血色の悪い頬に微かに赤みが差し、よほど面白かったのか、セレンは涙さえ零していた。
「ったく…もう…」
それを拭って、セレンはフードを被って蹲った。
「おい?」
「…もう…本当…ツボだ…」
セレンは震える声でそう言った。
「もう…嫌だ…」
震えたままの声に、それでも顔を上げたときには、すっかりまた元の無表情に戻ってしまっていたけれど。
今日は最高の日かも、なんて。
浅ましくもへリオはそう思った。


