「あー、さいこーさいこーおーいえーい」

「…」

「どう?食う?」

「…」

先ほどから上の空のセレンをへリオは揺さぶってみる。

「せーれーんー?」

「…はぃ…」

「本当上の空だよね君。一体どうしちゃったのさ?」

「誠実だとは到底思えない。どれだけ男を見る目がないんだあの馬鹿…」

「セレンくーん?」

全然反応しない。

へリオは溜息をつきつつなんだか効きそうな呪いをしているセレンを見守ることにした。


「もーウィングさんの馬鹿!!なんで覚えられないんですか!?経験!」

「えーとー…インタレスティング」

「違います!!」

ぷくーと膨れるアクアと苦笑いしながらかわすウィング。

つい三十分前までは逆の立場だった。


「そうでもないよ、ウィング結構誠実なところも…ないこともないし…ね?」

「神に愛された詐欺師がか。妖精にまで愛されやがってあの…」

「分かった、分かったからフッ素やめろ。塩酸もだめだからな、いい?」

セレンはなぜか過酸化水素水のボトルをブン投げると、魔法で移動してキャッチした。

「あの無意味なストレス発散。周りに迷惑かけないストレス発散…」

「それな」

キングは面白そうに言った。

「セレンもアクアちゃんのこと好きなのかな?」

「それはねーと思うぜ」

キースの問いかけに、キングはそう言った。

「セレンは結構一途なうえに分かりやすそうだから」

へリオはそう続けてニッと笑った。

「…何を根拠に」

「15歳にして初恋経験無し、と。おっそろしい堅物つーかなんつーか」

「一時はプレイボーイだったことは否めないケド。まあ7歳児をそう表現するのが正しいかはさておいて」

楽しそうなキングが後を引き取りつつ、面白そうに笑った。

白衣がこんなにしっくりくる人も少ないけど、着ちゃいけない人も少ないよねと、キースはそう思った。

「っていうか、セレンその気になれば100%射止めれそうだもんね、彼女いないなら当然初恋とかもまだかぁ…」

「しかも一途で分かりやすいに決まってる。一目見れば分かるくらいに狼狽するぜきっと」

へリオはそう言って、なおさら不思議なんだよと続ける。


「恋でもないならなぁんであんなに過保護なおとーさんみたいなことしてんのかなーと」

「お父さんごっこでもしてるんだろ、あいつただでさえ子供好きだし。たとえ見ず知らずの女の子でも子供である限り母性が働いちゃうんだよー」

「…うん、それは思った」

「しかも水色ヘアーの少女に反応する。あいつ何なんだろう」

「まぁ、あんまり詮索しなさんな」

へリオはそう微笑んで言った。

「たとえ重度のロリコンでも…さ」

「なに決め台詞みたいに言ってるの。そこは否定しといて」