「…とりあえず、一旦座ろうか」
こんなところで電気も付けずに抱きしめ合っているのもなんだか恥ずかしくなってきてしまった。
「うん、なんか私たちらしくないよねこういうの」
少し笑いながら君が言った。
いつもならそのままベッドに横になるところだけど、今日はソファに腰掛けた。
明かりをつけるのも恥ずかしいので、ベッド脇の間接照明だけスイッチを入れる。
「あと、一個言わなきゃいけない事がある」
少しの沈黙を先に破ったのは君の方だった。
「私、最初に凪くんとこんな関係になった日に彼氏と飲んできたって言ったよね?
あの日ね、振られてたんだ」
「…え?」
本当に驚いた時にはなかなか声が出ないらしい。きき返すまでに時間がかかった。
変に気を使われたくなくてあの時喧嘩の理由を教えてくれなかったのかと気付き、胸が締め付けられた。
「ずっと言えてなくてごめん。
でも、あの時は実際半ばヤケだったの。
こんな日に抱いてくれる人がいるなら十分だわって思ってたくらい。
…けど、何度も凪くんと会ってるうちにそんな風に割り切れなくなってきちゃって。
この数ヶ月、結構辛かった」
泣きそうな声でそんなことを言われたらたまらなくなって、気付いたら彼女の左手を握っていた。

