その日の放課後、わたしは数学準備室にいた。

「へえ、2年連続で主演か。

すごいじゃないか」

そう言った先生に、
「すごくなんかないですよ」

わたしは言い返した。

「だけど、どうして主演に立候補したんだ?」

そう聞いてきた先生に、
「立候補したんじゃありません。

千秋ちゃんが推薦してきたんです。

去年の『ピグマリオン』でヒロインを演じたから、わたしに演じさせるのがいいんじゃないかって…千秋ちゃんはそう言ってわたしを主演に推薦させたんです」

わたしは答えた。

全く、迷惑な親友である。

今年はもう主演なんかやりたくなかったのに…。

「最後の文化祭は先生と一緒に回りたかったです…」

そう言ったわたしに、
「僕も文化祭は忙しいからなあ…」

先生は困ったように言った。