荻原はフフッと笑った。

「どうした?」

そう聞いた僕に、
「初めてが先生でよかったなって思ったんです」

荻原が答えた。

「初めて…ああ、なるほど」

そうか、こう言うことも荻原は初めてだったな。

「残念ながら、僕は初めてじゃないけどな」

そう言った僕に、
「先生のイジワル」

荻原が言い返した。

「でも、わたしが先生の終わりになりますから」

「へえ、言うね」

「言いますよ」

僕たちはクスクスと笑いあった。

目覚まし時計に視線を向けると、朝の5時を少し過ぎたところだった。

「もう少しだけ眠ろうか」

「ええ、いいですよ」

僕たちは微笑みあうと、また目を閉じた。