キスすることは、なれているはずだった。

なのに僕は初めてのように荻原の唇に触れただけで、すぐに離した。

離れた瞬間、荻原の目が開いた。

大きな瞳は潤んでいて、とても色っぽかった。

「――先、生…」

荻原が呟くように、僕を呼んだ。

「――な、何だ…?」

僕はちゃんと、答えることができただろうか?

「――好きです…」

真っ赤な顔で呟くように言った荻原に、
「――僕も、荻原が好きだ…」

僕は返事をした。

たぶん、僕の顔も荻原のように真っ赤だろう。

「――先生、くっついてもいいですか?」

「どうぞ…」

荻原が両手を広げて僕を抱きしめてきたので、僕は彼女の背中に両手を回した。