恋をしよう!

僕の目の前にいる荻原は、まるで遠い存在のようだった。

みんなから注目を浴びている荻原は、まるで『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンが演じていたアン王女のようだった。

「遠いな…」

僕は呟いた。

生徒で、僕の恋人のはずなのに、荻原は手の届かない存在のようだった。

さっきまで数学準備室で一緒だっはずなのに。

誰よりも先に、僕にその衣装を見せてきたはずなのに。

ここへきたとたん、荻原は遠い存在へと変わってしまった。

グラウンドを1周すると、実行委員たちは退場門へと去って行った。

その瞬間、僕は荻原に近づきたくなった。

「ちょっとトイレに行ってきます」

古畑先生にそう言うと、テントを後にした。

校舎の中へと足を踏み入れると、下駄箱でバレエシューズについた砂を払っている荻原を見つけた。