唇を離すと、
「お兄ちゃん、帰ってるー?」

階段の下から一葉が呼びかけてきた。

僕は唇の前に人差し指を出して雪音に黙るように言うと、ドアから顔を出した。

「帰ってるけど、どうかしたのか?」

階段の下にいる一葉に声をかけたら、彼女はパジャマ姿だった。

頭にタオルがかかっているところを見ると、お風呂に入ってきたようだ。

「お風呂あいてるけど、どうする?

三春は先に入ったわよ」

そう言って声をかけてきた一葉に、
「後で入るから」

僕は言い返した。

「わかった」

一葉は返事をすると、その場から立ち去った。