サラリと、黒い髪が指と指の間をすり抜けた。

「話したら嫌われるような気がして、話すことができなかったの…」

雪音は泣いたせいで赤くなった目を僕に向けた。

それまで彼女の目を隠していたタオルは、床のうえに落ちていた。

「喉、乾いただろ?

泣いたから、水分が欲しいだろ…」

スポーツドリンクに向かって伸ばした僕の手は、雪音によって止められた。

「雪音…?」

名前を呼んだ僕に、
「あっ、ごめん…」

雪音は僕の手を離した。

僕は彼女を抱きしめていたことに気づいて、すぐに躰を離した。