「私ね、お母さんがいないの…。

お母さん、まだ赤ちゃんだった私を置いて、若い男のところへ逃げて行ったの…。

小学5年生の時、だったかな…?

お父さんが女の人を連れてきて、その人と結婚した…。

その人が私のお母さんになったんだけど…でも、お父さんとの間に子供ができて、その子のことばかりかわいがってて…」

雪音はグスグスと洟をすすった。

「そりゃ、男の子だし、大切な跡継ぎだから、大事にしたいって言う気持ちはわかるよ…。

でも、でも…」

「――雪音…!」

僕は彼女がケガ人だと言うことを忘れていた。

話をしている雪音がつらくて、かわいそうで、ケガをしている彼女を抱きしめていた。