「もういい、もう言わなくてもいいよ…」

これ以上聞きたくなくて、何より自虐的に話を続けようとする雪音のつらいところを見たくなくて、僕は彼女の手を取った。

「何でそんなひどい目にあって…」

声が震えているせいで、続きを言うことができない。

何回も、時には命を奪われるくらいのひどい目にあったと言うのに、何で男とつきあおうとするんだろう?

そんなんだから、君は“男喰い”なんて周りから陰口をたたかれているんだよ…。

「――だって、家には私の居場所はないんだもん…」

雪音が呟くように言った。

目をおおっているタオルを手で押しつけるように当てた。

泣いているのだろうか?