「そしたら家に元カレの友達が何人かいて、その人たちに暴行されそうになった。

抵抗したら殴られて、でも嫌だったから抵抗して、命からがら逃げてきた。

途中で何回も転んで、とにかく逃げて逃げて、助けを求めるためにどこでもいいと思って飛び込んだ先が…」

「俺の家だった、と言うこと?」

話をさえぎるように言った僕に、雪音は小さく首を縦に振ってうなずいた。

その後に続く言葉は、何も浮かばなかった。

「こう言うことはよくあることだから、心配しなくていいよ」

雪音が言った。

「よ、よくあるって…」

もっとひどい目にあったことがあるって言うことなの?

そんな僕の頭の中を読んだと言うように、
「こんなのは、まだいい方だよ…。

タバコの火を押しつけられたり、カッターナイフで腕を切られたこともあったし…」

雪音は呟くように言って、話を続けようとした。