キョロキョロと彼女は目玉を動かして周りの確認をすると、
「――ここは…?」

かすれた声で、呟くように言った。

「俺の家だよ」

そう答えた僕に平雪音の視線がゆっくりと向けられた。

「あなた、覚えてないの?」

母が平雪音に聞いた。

「九重…私の息子なんだけど、彼が言うにはあなたは突然駆け込むように店内に入ってきたそうよ。

それも何があったのか、ケガをした状態で」

そう話を続けた母に、
「――すみません…」

彼女は呟くように謝ると、躰を起こそうとした。

「――イタタ…」

すぐに起きあがることができなくて、そのままソファーに倒れ込んだ。