中庭の隅に忘れ去られたように置いてあるベンチに腰を下ろすと、
「授業は大丈夫か?」

僕は横山に声をかけた。

「大丈夫ですよ。

俺はちゃんと考えてサボってますから」

そう言って横山は僕の隣に腰を下ろした。

「それで、何の話をするんだ?」

そう聞いた僕に、
「平雪音(タイラユキネ)の話ですよ」

横山は答えた。

「平雪音?」

聞き覚えのない名前である。

その名前を聞き返したら、
「九重さん、人の名前はちゃんと覚えた方がいいですよ」

横山が呆れたと言うように言い返した。

「後それと、彼女にはあまり関わらない方がいいですよ」

その後で、横山が付け足すように言った。