その翌日、定期入れのことを聞くために僕は学校へ顔を出した。

「あれ、九重さんじゃないですか」

そう言って話しかけてきたのは、僕が所属しているフォークソングクラブの後輩である横山だった。

後輩と言っても、僕は単位不足で留年しているため彼とは学年が一緒だ。

「どうしたんですか?

今日は授業じゃないですよね?」

そう聞いてきた横山に、
「落し物の相談だよ。

定期入れを落としたんだ」

僕は答えた。

「定期入れですか?

大変っすねー」

横山は同意をするように言った。

「学務課に行って届け出がないようだったら今度は警察行きだよ」

やれやれと息を吐いた僕に、
「小暮九重さん、ですか?」

聞き覚えのある声が僕を呼んだ。