ま、マズい…。

竜馬の手がセーターのすそに触れようとしている。

「――何するのよ!」

バッチーン!

竜馬の頬に平手打ちをかました。

「イテテ…」

平手打ちをかまされた竜馬は頬を手で押さえると、ソファーから崩れ落ちた。

その姿を見送った後、落ちてしまった小説を手に持った。

全く、油断も隙もないったらありゃしない。

「桃子、別にキスくらいいいじゃないか。

何より、桃子も…」

「それ以上言ったらコーヒーをなしにしますよ!」

竜馬の話をさえぎるように私は言った。

「すみません…」

呟いているような声で竜馬は謝った。