小説から顔をあげて竜馬を見たら、
「――ちょっ、ちょっと!」

彼の端正な顔はすぐ目の前にあった。

「何だよ、返事したじゃないかよ」

その距離はわずか数センチ、マジで唇が触れる5秒前と言うところだ。

「だからと言って、それはないんじゃないですか!?」

聞いていなかった私も私だけど、言ってきた竜馬も竜馬である。

「邪魔者はいないんだ。

この家にいるのは俺と桃子の2人だけだ」

「いや、でも…」

竜馬から顔をそらそうとしたら、あごに指をかけられて彼の方に向かされてしまった。

近いよ…。

近過ぎるよ…。

私を見つめてくる端正な顔に、心臓がドキドキと早く脈を打ち始めた。