不安な気持ちを飲み込んで、教室の戸を開ける。
…と、中にいたのは男の子一人だけだった。
男の子が気づいて、私の方を見た。
目が重なって、その瞬間、ドクンと胸がなった。
「補習…?」
「まぁな」
男の子はそう言って一瞬笑顔を見せた。
その笑顔に………私はなぜか、なんとなく懐かしさを覚えた。
「俺、中嶋 優斗(なかじま ゆうと)っていうんだ」
驚いた。
名前も、どこかで聞いたことのある名前だったからだ。
「あんたは?」
「私、佐野 ひなた」
どこかで……
そこまではわかるんだけど、思い出せないことが歯がゆい。