愛してるなんて言わないで



あまりにも突然、核心に触れられて、動揺から目を泳がせてしまった…。



「好きじゃ…ない。」

「嘘つき」

「嘘じゃない。」


嘘だけど…。

好きだけど。

伝えたらいけない想いなんだ。



「社長は…ただ、私を振り向かせたいだけじゃないの?


バツイチ女を振り向かせたって社長にはなんのメリットもない。

私をあまりからかわいでよ…」


視線を合わせられないまま答えた私に彼は言う。


「結花さんや颯太が好き。それだけじゃ駄目なの?」

「駄目だよ…。

そんなに甘くない。

社長みたいな人は…もっとちゃんとした人と恋をして、愛を育んで結婚するべきなんだよ。」


「どうしてそんな言い方をするのさ。好きなのに…」







幸せになってもらいたいからに決まってる。


社長の…

翔太さんの幸せを望んでるからに決まってる。




恋に恋をして

恋に溺れていいのは…


子供が生まれてくるまでなんだよ…。


恋をしたいなら。

恋に溺れたいと願うなら…。


その相手は私じゃいけない。

私は…


もう二度と


恋に溺れるなんてことはできない。


女である前に

親だから。