父親と遊ばせることはできなくても…


そんな真似っこをすることくらい…

一度でいいから叶えてあげられないだろうか?


離婚から1年が経とうとした頃、そんな風に考えてる私に、友人か紹介してくれたのが…


湯川社長だった…。



「本当に?本当にそんな人紹介してくれるの⁉」

夢物語を話すように叶えてあげれない理想を愚痴っていた私に「いいよ。うちのお兄ちゃん、子供好きだから一日くらい、子供と遊ぶボランティアができるって聞いたら喜ぶはずだわ」


「…どんな優しい人でもこんな頼み事をきいてもらえないんじゃない…?」


不安で聞き返す私に、友達の依子は笑った。


「あははっ!大丈夫だって!子供が好きだけど結婚する相手もなく…

保育士になる夢も叶えられなかった兄なら、どんなに忙しくても来週の日曜は行くと思うよ…?」

「出かけ先でかかる諸々のお金を払うくらいのことしかできないんだけど…?


それでも大丈夫かな?」


「問題ない!問題ない!」


「それなら…よろしくお願いします。」




そして、約束の日曜日、約束の場所である動物園の入り口で、私はどきどき緊張しながら、何も知らない颯太の手を握りしめて依子の兄を待っていた。



たった半日限りの家族ごっこ。

颯太のお父さんじゃなくても…

颯太の憧れを叶えてあげられる日。


依子のお兄さんは本当に来てくれるだろうか…?


そわそわしながら待っていると、遠くから真っ直ぐ歩いてくる男性を見つけた。


それが湯川社長だったんだ…。