愛してるなんて言わないで



すると、会場の奥で男性が手をあげた。


「こんな風に花嫁を選んでしまったら…


選ばれなかった女性は恥をかいてしまうのでは…?」

赤ら様に私を見ながら聞いている。



それはみんなが思ってることなんだから…わざわざ聞かないで欲しい…。




「いえ…こちらのみなさんはそれでも、花嫁として立候補されたんです。


その覚悟を知って、湯川翔太社長もこの話しを受けたのだと聞かされています。」



いや…私…そんな覚悟もないまま立たされてるし…



でも…


そうだったんだ…


翔太さんは

覚悟を決めて


婚約者を選ぶつもりでいたんだ…。



それなら…


ちゃんと見届けなきゃいけない。





深呼吸をして


真っ直ぐ前を見た。




私の見方はこの会場に

依子一人だけ…


きっと彼女は

こんな悲惨な思いをした私のために


後で一緒に泣いてくれるに違いない…。




すると…

反対側の舞台袖から姿を現した翔太さん。


私達の前に立ち

この綺麗な女性達の中にいる私を見つけて



一瞬、驚いた顔をした。




いや、驚くでしょうね…。

私が今日、パーティーに、くることも彼は知らなかったんだから…。




私自体、このパーティーに呼ばれたのは、今朝仕事に行く直前だったんだし…


だから


嘘をついて休んだ…。



好きな人の誕生日に

おめでとう。くらい言いたくて…。





向こうから順番に、女性と話しをしていく翔太さん。


私の前に立った時の彼の第一声は「なんで君がこんな所に…?」だった。