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「結花、久しぶりっ‼」
パーティー会場の前で待っていると、目の前で停ったタクシーから、依子がおりてきた。
「社長の妹がタクシーで登場なわけ?」
笑う私に
「私は普通のOLよ?」と呆れたように言い返す。
「でも、社長って肩書きの人は凄いね?誕生日ってだけでホテル貸し切ってパーティー開いちゃうんだから」
「ああ、これはお父さんが勝手にしたこと。」
「私なんかが来て大丈夫なのかな?」
「それを言うなら私もだよ」
「依子は社長の妹でしょ?」
苦笑いする私に
依子は「お父さんが結花さんも呼びなさいって」
「へっ…?」
なんで?
「もうパーティー始まっちゃってるし詳しい事は中で話そう?」
「えっ…うん?」
平日の真昼間からの誕生日パーティー。
なんとか有給を使って休んだけれど…
社長の誕生日パーティーに行ったなんて言ったら他の社員に
「社長がひいきしてる。」なんて言われかねないから。
嘘をついて休んでしまったけれど…
パーティー会場には、私と住む世界が違うような
気品溢れる人ばかり。
「翔太さんって凄い知り合いが沢山いるのね?」
「ほぼ、お父さんの知り合いよ?」
「へぇ…」
平日の真昼間からシャンパンやワインを片手に…
私の知らない世界だ…。
「そうそう、結花にお父さんから言付があるの。」
「なに?」
「今日のこのパーティーにお兄ちゃんの花嫁候補が何人か来てるらしくて
今日、お兄ちゃんがその婚約者を自分で選ぶから
しっかり受け止めなさいって…。
まるでお見合いパーティーだよね。」
「そう…なんだ?」
それは…
今日ここで
ちゃんと諦めろというメッセージなんだ…。


