半壊している家、瓦礫が山積みになっている広場、ひび割れが起きてる道。

 昨日着いた時は活気のある町にしか見えなかったが、こうして見ると被害はかなり深刻そうだ。

「ねぇ、何か揺れてない?」 

 立ち止まってヴァレリーがつぶやいた。

「ヴァレリーんとこだけ揺れてんじゃないか?」
「こんな狭い範囲だけ揺れるわけないじゃないの」
「…そう言われると揺れてる気ぃするけどよぉ、何かわかんなくなるよな」
「だよね…」

 近くの店の吊り看板を見ても、風であおられているからさっぱり分からない。

「うぉぉっ!すげぇ揺れてっぞ!」
「バカヤロ。あれは風で揺れてんだよ」

 辺りをうかがうが、それと分かるほどの揺れは来ないようだ。

 リアは、我関せずという感じでヴァレリーに掴まりながら寝ている。

「ちょっと、リアってば寝ないでよ〜」

 再び歩きだす。

「昨日の夜も揺れたよなぁ」
「気づいた?やっぱり。騒ぐほどじゃなかったけどね」
「オレ、知らないぞ」
「えっ、本気で!?」
「いやぁ、心地よい睡眠だった!」
「…だよなぁ、おめぇすげぇいびきかいてたし…」
「一番に死にそうね…」
「や、オレ死ぬ気ないぞ」
「そういう問題じゃないと思うけど…」


 町長の屋敷を出発したのは朝7時過ぎ(泊めてもらった)。

 風はうるさいが、まだまだ町は静かだ。